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狼になった紅を抱きかかえ邸に戻ると、ちょうど璃胡が真火に庭を案内しているところだった。
璃胡はぐったりと眠る紅を見るとすぐさま駆け寄った。
「紅…!!またこんなに弱って…」
頼爾は璃胡に紅を引き渡した。
璃胡は泣きそうな顔で優しく抱き締め、真っ白な毛をそっと撫でる。
「…璃胡さま…」
心配そうに真火が顔を出した。
その真火の姿を見て、頼爾も悠羅も一瞬驚いた。
「これは…見違えたな」
紅梅の小袿。裾のほうには小さな梅の花がひっそりと同じ糸で刺繍されていて、動く度に光を浴びて浮かび上がる。
唐衣には目を引く唐紅。
「璃胡さまに貸していただいて…こ、これで庭に出るのは躊躇われたんですがっ」
「あら、良いんですよ。とても良くお似合いですもの」
ころころと笑う璃胡に、はにかむ真火。
「そうそう、女子なんだから着飾って信爾殿を魅了しないと」
ひょいと輪に入ってきたのは朋成だ。
こちらも璃胡同様、楽しそうに笑っている。
信爾はと言うと、縁側で照れたように微笑んでいた。
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