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「今夜はここにお泊まりください」
案内されたのは邸の母屋にあたる小さな庵。
「真火さんと悠羅さんには邸の方に寝所を用意致しました」
「何から何まで申し訳ない。お世話になります」
頼爾が頭を下げた。朋成はははは、と快活に笑い、
「久しぶりに賑やかで楽しい夜が過ごせて璃胡も喜んでいますよ」
静かな夜に、涼やかな虫の音色が聴こえる。
蚊帳の中、邸の灯を眺めながら信爾がため息を吐いた。
「…紅が妖…悪い妖でなければ良いのですが…。
兄上を襲った紅は、本当の紅の姿なんでしょうか」
「まだ分からんな。しばらく様子を見ようか…。空に使いを出しているから、何か分かるかもしれないしな」
「空に使い…?それって、もしや…」
信爾の問いに、頼爾は妖艶に微笑んで、読んでいた書物を捲った。
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