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「…ってか本当に、妖使い荒すぎ!」
月の光が美しい夜に、白い羽根を広げ飛んでいるのは珀露だ。
ぶつぶつと文句を言いながら、頼爾に言い渡された偵察飛行に飛び立っていた。
「…確かに妖の空気はするけど…ここはいろんな妖いるしなぁ…」
ふぅ、とため息を吐いた途端、横から強い風に煽られた。
「わっ!?」
突然の出来事に、珀露はそのまま墜落してしまった。
「ヤバ…っ!!」
生い茂る木に墜ちて行きそうになり、珀露はぎゅっと目を瞑った。
けれど身体に衝撃はなく、鼻先を金木犀の香りがくすぐった。
「あ、れ…?」
恐る恐る目を開けると、珀露は誰かに抱き止められていた。
月の光で逆行になり良く見えないが、黒い羽根と面を被っていることは分かった。
「誰…?」
『雛に夜風は危ういぞ…。鬼物の怪に喰われたくなかろう』
それだけ言うと、男は素早く峰へと飛んで行った。
ふと気づくと、衿に黒い羽根が一枚滑り込んでいた。
羽先が朱色に染まっている。
「…もしかして…。まさか、ね」
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