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夜の偵察から戻った珀露は、「変わったことはなかった」と言ってどこかへ消えてしまった。
「珀露…どうしたんだろう?何もなかったって顔ではなかったけど…」
半ば独り言のように呟くと、頼爾が読んでいた書物から目も離さずに、
「私たちが気にしている出来事はなかったんだろう。…何かあった、というのは隠しきれてないが」
「そうですね…」
信爾はまた、闇夜の月に目を移した。
うっすらと雲の衣に覆われた朧月。
こんな夜は、人では無い者が闊歩すると幼い頃に聞いたことがある。
あれは誰の言葉だったか…
「兄上…」
話をしようと振り返ると、なぜか頼爾の姿はなかった。
「え…あれ?」
辺りを見回したがそれらしき姿はどこにもない。
出る場所は、今見ていた襖の先だけ。
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