14人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
いくら快楽への貪りに取りつかれていたといっても、あんな……あんな……。
思い返し、ただでさえ発熱している顔面から火が出そうになった。
私の名を呼びながらスッとその場より起立した麻衣は、ブラウスの袖口で顔に付着した自分の唾液と私の愛液が混ざり合った水分を払拭していた。
その払拭している腕が図書室の天井を突き破らんばかりに空を切って振り上げられ
某空き地の裏に住んでいるカミ◯リさんもクリビツな拳骨の一撃が―――
殴られる寸出までの想像に費やした現実時間、約三秒。
更にその先にある恐怖の場面に脳内映像がシフトしようとした、四秒後の出来事である。
椅子にぐったりと脱力した身体を預けていた私に、柔らかくて暖かい重みがのしかかった。
その正体を突き止めるのに長い時間は要さなかった―――いや、要することなんてあってたまるか。
すぐにでもわかる
この身を委ねたくなるような心地良い温もり。
「キスして」
私の太ももに跨がったことによって、いつもより少し高めの位置にある重みの主の顔を見上げる。
麻衣は私と視線が絡んだのを合図に、臨戦態勢をとった。
瞼をゆっくりと閉じ、僅かながらに唇を突き出す。
「……でも」
しかし、事ここに至っても未だ私は接吻という行為に二の足を踏んだ。
何てたって、今の私はアレがアレでアレなわけだから、つまりアレであるからして、アレなのですよ。
ぎゅうっ。
逃避的思考を巡らせているドアホこと私の首に回された両腕に、僅かではあるが、力が込められたような気がした。
現実に加えられている力、それを大きく上回る想いが腕を伝って感じ取れるのは、きっと気のせいではないだろう。
「お願い」
「……わかった」
ついに根負けをした私は股がる麻衣の腰に腕を回し、限界まで密着できるように抱き寄せた。
そして突き出された淡い桃色の唇に自分の唇を重ね合わせる。
「ん……んんっ……」
時間が経つにつれ、段々と息苦しくなってきた私は、酸素を取り入れようと閉じていた唇をほんの少しだけ開ける。
すると待ってましたと言わんばかりに、麻衣の舌がニュルリと滑り込んできた。
っ!!
まずいっ!このままだと!
人知れず戦慄する私を知ってか知らずか、口内を無遠慮に這いずり回る温かい粘膜を纏った暴れん坊将軍。
そして
その暴れん坊将軍(命名)は決して触れてはいけない一点に、悲劇にも触れてしまう。
ピタン。
最初のコメントを投稿しよう!