0人が本棚に入れています
本棚に追加
あれから1年経った。
県立大学は、耐震に問題があったようで、地震、津波の猛威により、完全に倒壊した。
倒壊してしまった県立大学に通っていた学生は、他大学に編入させられることになっていた。
勿論、朱里や翔太も。
そして、朱里が編入することになった大学が。
愛媛県立黎明大学。
「朱里」
合気道部が存在する大学は、近くにある大学では、この黎明大学のみだったため、合気道部の部員は、皆黎明大学に編入することになっている。
勿論、翔太も例外ではない。
「翔太先輩」
あれから、恥ずかしながらも翔太のことを名前で呼べるようになったが、あれ以上に仲が進展したわけではなかった。
「黎明大には慣れた?」
朱里の髪を撫で付けながら、翔太は聞いた。
「そうですね。こっちでの一人暮らしにも慣れましたし、部活の皆さんも良くしてくれてます」
朱里の笑顔を見て、翔太も優しく微笑んだ。
「先輩も、そろそろ実家通いに慣れました?」
翔太は実家が黎明大学の近くにあるため、この大学へは実家から通うことになっていた。
「はは……慣れたっちゃ慣れたけど、変な感じだよ」
翔太は朱里の髪を未だに弄りながら、苦笑した。
そんな他愛ない雑談をしながら、朱里はこれからの大学生活に思いを馳せた。
最初のコメントを投稿しよう!