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痛む背中を無視して、無理矢理身体を起こす。余りの痛みに顔を顰めると、一番小さな女の子が直ぐにあたしの側に寄って来て身体を起こすのを手伝ってくれる。
「有難う。」
小さくお礼を云うと、女の子は恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。
……こんな時に云うのもなんだけど。凄く、可愛い。
「あの、詳しく状況を説明して頂けませんか?」
だってあたし直ぐにでも帰らなくちゃ。中間近いんだって!
「へぇ…、」
一番年嵩の彼女が気の抜けたような返事をする。あ、ダメだ。この子は天然ちゃんかもしれない。
「あの!私、葉月 流と云います!急いで家に帰らなきゃ行けないんです。お願いします!」
気が急いて、自然と声が大きくなってしまう。
それが背中に響いてあたしはまた顔を顰めた。
「ご無理は、あきまへん…。」
消えそうな声が、またあたしの背中を支えてくれる。一番小さい女の子だ。
「雪ちゃんの云う通りどす。陽も暮れたさかい、此処に泊まって行かはったらどうえ?」
あたしと同い年くらいの女の子が凛とした声でそう云ったこの子はしっかり者そうだ。
「けど、ご迷惑になるんじゃ…。」
「かましまへんえ、流はん。旦はんを置屋に置くとなったらお母さんが怒るやろうけど、うちらが黙って居ればええことどすし。なぁ、君菊はん。」
天然の彼女はゆったりとそう云う。
「へぇ、音夏姉はん。」
君菊と呼ばれたしっかり者そうな彼女も少し微笑んで頷く。
だったら。背中も痛い事だし、此処に一晩泊めてもらおうかな。
あ、でも家に電話しなきゃ。あと病院行きたい。背中痛い。
「じゃあ、一晩だけ…。」
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