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口減らしとか、凶作とか、武家とか、刺客とか。そんなのそれこそ歴史の授業で聞くか聞かないか。
歴史が好きなあたしだったからこそ、小説とかゲームとかテレビで多少は馴染みのある言葉だったけど。
それでも日常生活にホイホイ出て来るような言葉じゃない。
「………待って、」
あたしは自分に云い聞かせるために小さく呟いた。
もしかして、あたしは、___________。
背中に少しの力を入れると途端に激痛が走る。これは、夢じゃない。
「そやさかい、あんましあの子ォらの傷には触れんと居ておくれやす。特に、雪ちゃんは。」
天然ぽかった音夏さんも流石にシリアスな顔付きだ。
音夏さんが嘘を吐いていると云うのは最も考えにくい。
鼓動が痛い程に鳴った。身体中の血管と云う血管が広がって居る気がする。
呼吸が苦しい。視界が明滅する。
此処は、何処?
ううん、此処は、__________________いつ?
浮かんだ疑問は、消えること無くあたしの頭を殴るようにその存在を主張している。
まず身体を支配したのが恐怖。それから悲しみ。そして、一抹の希望。
矛盾した感情を一先ず噛み殺して、あたしは音夏さんをひたと見つめた。
「音夏さん、私、」
そしてやっとの思いで口を開いた所で、運良くと云うか運悪くと云うか。
襖が開かれた。
「え?」
あたしは入って来た人物を見て、呆然と呟くしかなかった。
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