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「郷土史家の吉良殿のご息女か?」
「えっ?おじいちゃんをご存知なんですか?」
さっきまでの恥じらいはどこへやら。弾かれたように顔をあげると、美しい指が塵取りを指している。そこにはマジックで「吉良」と書かれていた。
「私、孫の吉良茜と言います。おじいちゃんのお知り合い?」
「ええ。昔からのね。ここにもよく来ておられた。しばらく見かけないが…」
声に似つかわしい優しい笑みで頷かれ、更に祖父の知己とわかり、歩を進める。
「あの…、おじいちゃん、亡くなったの。」
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