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慌ただしく学園長に一礼し、駆け出した友を追いかける、ナタリー。
彼女達の後姿を、笑って見送った彼は。一人たたずむ廊下で、窓越しに遠くの空を見やり。独り言ちた。
「この先、何もなければ、良いのだが・・・」
学園からバスを乗り継いで、二時間ほどの所に、志音の家はあった。
着替えをして喫茶店に寄った後、ケーキを買い。訪問する時間は、午後五時。夕日が春の夜に溶け、移り変わる頃。
「ごめん下さい。」
アリスとナタリーは、その家の前に立ち、そう訪ねてみた。
今時、インターフォンも無い家も珍しく、どう対応したものか思案した末、呼びかけて見る事にしたのだ。
奥に居て、聞こえないのか。もう一度、呼んでみる。
「ごめん下さい。立花志音君は、ご在宅でしょうか?」
すると、奥の方から、トットットッ・・と。誰かが駆けてくる、音がする。
ガラッと、趣のある引き戸が開いて、小学生くらいの、少年が顔を出した。
「兄ちゃんなら、いないよ?」
その時後ろから、女性の声で、少年を呼ぶ。
「正吾、お客様なの?」
「うん、兄ちゃん。いないかって!」
今度は、パタパタパタと、床を鳴らし。姉だろうか。高校生くらいの、少女が顔を覗かせた。
「もしかして・・・兄の、大学の方ですか?」
「ええ、学園で生徒会長をしています。アリスです。」
「私は書記の、ナタリーです。」
その言葉を聴いて、少女が大げさに騒ぎ出す。
「えええっ!?お兄ちゃん、今度は何をしたんですか!!」
慌てる彼女を、アリスがなだめる。
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