0人が本棚に入れています
本棚に追加
「いえ、そういうんじゃないの。私の祖父と、こちらの鉄舟さんが、古くからの知り合いだって事が分かって。改めて、ご挨拶に伺いました。ごめんなさいね、驚かせちゃって。」
すると少女は、安堵した様子で。
「あぁ、何だ。そうだったんですか・・・お兄ちゃんは、見た目から何から、とにかく普通なんですけど。昔から、妙にいろんな事に巻き込まれるというか・・・最近は、逆に周りを巻き込んでるんじゃないかと、思ってるんですが・・・」
二人は、この妹の鋭い観察眼に、心の中では同調していたが。そこは、笑って誤魔化した。
「へっ・・ へ~~っ・・・そうなんだ・・・」
「なんじゃ?玄関先で、騒がしい。」
「あっ、じいちゃん!」
最後に姿を現した、この人物こそ。立花鉄舟、その人である。
「初めまして、鉄舟さん。お話は祖父からお聞きしております。お会いできて、光栄です。」
着流し姿に、頭を掻きながら現れた彼は、うたたねをしていた様で。寝ぼけ眼に眼鏡をかけて。アリスを、まじまじと見た。
「なんじゃ?お前さん、あの学園長の孫娘か?」
「はい、アリスと言います。こちらは、友人のナタリーです。」
二人揃って、恭しくお辞儀をする。
「本日は、祖父もこちらにお伺いしたいと申しておりましたが、やむを得ず急な用事がありまして、私達が代わりに、ご挨拶に参りました。」
「奴さんは、元気かね?」
「はい、お蔭様で。くれぐれも宜しくと、申しておりました。これは、祖父からの贈り物です。つまらない物ですが・・・」
と言ってから、例のケーキを差し出す。
「わぁい!ケーキだぁ!!」
末っ子の、正吾が。ひったくる様にその箱を受け取ると、姉の美雪がその態度を叱った。
「こら!駄目でしょ。お行儀悪いぞ!!」
「そうじゃ!それは、わしが貰った物じゃからして、まず、わしに選ぶ権利がある!!」
「お・・・おじいちゃんまで、何言ってんの!」
賑やかな立花家に、緊張もほぐれた二人は、自然と笑顔になった。
最初のコメントを投稿しよう!