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「ほら、堅苦しい挨拶はいいから。二人共、中にお上がんなさい。そのうち、あいつも帰って来るじゃろうて。」
「では、お言葉に甘えて・・・」
二人は、客間に通された。普段は、椅子の生活に慣れているため、和室の畳の緑が新鮮に見える。
慣れた様子で、美雪が座布団を敷き。お茶を出してくれた。
鉄舟の前には、早速に頂き物のケーキがある。嬉しそうに、それを頬張りながらも、とつとつと、話始めた。
「それで、昨日やつに、何があったんかいね?じじぃに会いに来たのは、ついでじゃろう?」
何もかも、お見通しの様で、二人はギョッとして、顔を見合わせた。
「隠さんでもよいわさ。わしも一応、ヒーローじゃ。もう大分と、焼きが回っとるがの。ハッハッハ!!」
「・・・それでは、お話します。実は・・・・」
アリスは、学園であった事を、話し始めた。
不法侵入した犯罪者の事。人質に取られた生徒を、志音が助けた事。まだ犯罪者達は、全員捕まっていない事・・・
あらましを聞き終えて、お茶をすすりながら、鉄舟はつぶやく。
「そうか・・・なるほどのぅ・・・」
「あれは、素直な良い子じゃが、不器用な性質でな。悩み事があっても、まず人には、打ち明けん・・・心配をかけようまいと、しておるんじゃろうが、わしにはそれが、少し寂しくてな・・・」
ふと見せる、老人の物悲しげな表情に。二人は何も言えずにいた。
「おぅ・・いかんいかん。年寄りのたわ言じゃ・・・・どれ、土産の礼に。お前さんの爺さんの、若い頃の笑い話でもしようかの!」
それからは、鉄舟の独壇場だった。客間からは、二人の笑い声が絶えず、あっという間に、もう夕飯時になっている。
美雪が二人に、夕食を一緒にどうかと誘ったが。また再び訪れる事を約束して、今日のところはと、遠慮した。
皆で、客人を玄関先まで見送りに出る。
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