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「あ、はつねーー!こっちこっち。おそいよー。」 お座敷の席から、見知った親友の顔が覗いてほっとした。 「セツ、ごめんね。遅くなって。」 今朝出したばかりの秋物のショートブーツを脱ぎながら、お座敷ならパンプスにするべきだったかも、と事前確認を怠った自分に内心少し反省しながら笑顔を見せた。 「待ってたんだよー。初音が来ないと話も進まなくってさ。」 今日の集まりは、親友のセツコの婚約記念パーティ…と言うほど堅苦しいものでもないけれど、お互いの友人へのお披露目会と言ったところ。 「初音のための合コンみたいなもんなんだからさー。」 そんな話は、初耳だった。 「なにそれ。主役がナニ言ってんの。」 思わず苦笑いになりながら、セツコの方へと近寄った。 その隣見つけた、彼の姿。 綺麗な指先が目に映った。 長くて、繊細な指先。 細くて健康的な爪。 つい見とれてしまうほど、しなやかな手だなと思った。 「初めまして。」 涼しげな眼差しの素敵な笑顔を向けられて、ふと我に返った。 「あ、すみません…初めまして。」 「いつもセツコがお世話になってます。婚約者の牧野 ユキヒトです。」 「こ、こちらこそいつもお世話になってます…友人の岡 初音です。」 精一杯、笑顔を作って答えた。 初めて会ったかの様に、振舞うために。 「ユキヒトも初音もなんか硬いなぁ。お見合いじゃないんだしさ。」 セツコはいつもと変わらない無邪気な笑顔で私たちを笑った。
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