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ピンポン~
人工的なチャイム音が部屋に響き、ようやく枕から顔を上げた。
どの位泣いていたのかも解らないくらいの時間が経っていた。
ピンポン~
またチャイムが鳴る。
渋々階段を降りて、ドアを開けた。
「っ…風丸さん…」
扉を開ける前にモニターをチェックするべきだった、と心底後悔した。
「話を聞いて欲しくて…駄目かな?」
俺は小さく肯いて渋々中へ招いた。
風丸さんは少し切羽詰まった顔を浮かべ、ありがとうと言う。
「俺のこと、どうでもいい?」
部屋に招き入れて、ソファーに腰掛けた風丸さんを睨むように言う。
「何で…?」
「俺のこと性欲処理相手だったの?」
歯を食いしばって涙を堪える。
「……。」
風丸さんは一切返事を返さない。余計に涙が溢れてついに決壊したダムのように零れてしまう。
「俺のこと…」
ギュッ
突然抱きしめられて意味が解らないと戸惑う。
「話、最後まで聞いて…霧野?」
俺はこくこくと俯きながら肯いた。
「俺は教師であり、サッカー部の顧問だ。だからあんな所で、身体を重ねたらマズイだろ?」
風丸さんは、さっきは円堂といつものじゃれ合いをしていたんだ。ごめんな、風丸さんは頭を優しく撫でた。
「ごめんなさい…風丸さん…」
漏れる嗚咽をきちんと受け止めてくれた。
「また、今度は家にしような…」
風丸さんのわざとらしい科白にクスッと笑うと霧野…と年上の恋人は大人っぽく微笑んだ。
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