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「えー、いいじゃないっすか!」
狩屋が不満気にぶうぶう文句を言う。
「狩屋…?」
神童より先に剣城がシード(黒歴史時代)と変わらない恐ろしく低い声で凄んでいる。
「そんなに怒らないでよね!あ~もう解ったよ~!ごめんなさい!」
ふざけるな~!と俺がワザとらしく怒るふりをするとギャーギャー騒いで追いかけっこをした。
それから集合時刻…
「全員揃いましたね!」
天馬がみんなを一通りぐるっと見回し、満足そうに笑った。
「じゃ、出発で~す!」
「「オーーーー!」」
さすが運動部だけあって、揃った返事が気持ちいい。
全員の声が澄み渡る様な青い青い空に響く。
今日は部活の先輩後輩関係なく、はっちゃける錦やそれを宥める影山。
天馬は神童の隣から片時も離れようとしない。
わかりやすく噛み砕いて言えば、とても子供っぽくて、普段の無理矢理大人びた性格が無くなったように俺は感じる。
ガタンゴトン…
電車の中で向かい合うようにメンバーが揃って座る。
「誰かお菓子持って来た人~!」
浜野がヘラヘラ笑いながらみんなに尋ねた。
「僕持って来ました!」
信介は体格に合わない少々大きなリュックからお菓子をぽんぽん取り出した。
「うわー、う○い棒が有りますよ!懐かしいなぁ~」
速水が大喜びでう○い棒を手に取った。
「私もあります!」
「あたしもあるぜ!」
「…私も」
マネージャー陣は手作りらしく、可愛らしくラッピングされたお菓子を取り出した。
中身は……。
空野葵 クッキー
瀬戸美鳥 クッキー
山菜茜 クッキー
まるかぶりだ。
しかもどれもこれも独創的でとても…不味そうな色だ。
メンバーの顔が引き攣る中、俺も用意したお菓子を取り出した。
「あ!これ霧野先輩の手作りですか!?凄い~!」
俺も実を言うと昨夜一生懸命ドーナツを作ったのだ。
俺は両親が不在の事が多い為、おやつ位は自分で作れる。
「あれ…?一つ足りませんね?」
どうやら数をミスしたせいで、1人食べられないらしい。
「俺、結構です。」
俺の恋人の剣城がいらないと言った。
…本当はお前の為に作ったのに、と心に毒を吐きつつ溜息を零した。
[次は、西稲妻遊園地前~]
車掌の独特なアナウンスを聞いて全員が降りる支度を始めた。
一瞬、剣城が俺に淋しげな笑いを浮かべた気がした。
「遊園地だー!」
後輩の元気さに少し呆れながら…
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