風蘭

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*風丸が数字の先生&お付き合い中のパラレルです。 「はぁ…」 数学の授業中、ノートにシャーペンの先をコツコツとぶつける。 年上の恋人は綺麗な空色の髪をハーフサイドから夏らしく、ポニテにしている。 伝説のイナズマジャパンのメンバーだった彼は程良く均等に筋肉がついた腕を振って黒板に何やら公式を書いている。 俺、霧野蘭丸は特にこの時間が大の苦手だった。 別に成績は悪くないし(寧ろ模範的な位に)数学なんかは得意分野だ。 しかし、年上の恋人の授業ともなれば余計に集中力が切れるのが当たり前だ。 「じゃあこの問題を…霧野!」 ボーッとしていたせいで半分しか内容を聞いていなかった。 しかし、黒板に書かれた問題は思いのほか簡単らしい。 「これで、正解ですか?」 黒板に書き終えた計算式を見て風丸さんは、満足そうに頷いた。 「よし、正解!流石だな!」 肩をボンッと叩かれる。 少し触れてくれるだけで胸がときめく。 そうクラスメイトに悟られない様に平然とした顔を何とか装った。 そしてチャイムが鳴る。 「じゃあ今日はここまで!」 そう言うと、風丸さんの周りに女子が群がる。 「本当、人気者だな。」 俺が何気無くぼやくと、斜め前に座っている神童が苦笑する。 「霧野こそじゃないか?」 「はは、確かに…」 雷門二代イケメンと呼ばれる事もある俺達が言うときっとクラスメイトの男子が凄い殺気を放つだろうと思うと少し怖い気もするが…。 女子に囲まれながら風丸さんは教室を出て行く。 その時こっちを見て、口だけこう言った。 「またいつもの場所で。」 それが俺と風丸さんとの唯一の学校内での会話だった。 俺は教室を出た風丸さんを目で少しだけ追った。 「霧野も年上相手は大変だね。」 神童だけしか知らないこの事実を小さく俯きながら頷いた。 「人の事言えないぞ、お前も。」 鬼道さんとお付き合いしている神童も同じ様に俯いた。 年上の恋人は大変。 それしか今は考えられない。
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