11人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は部室で円堂の立てた練習メニューを見ていた。
「んでも、本当に風丸は霧野にベタ惚れだなぁ!」
カラカラと明るく笑う円堂に気恥ずかしさを感じながら、蒸し返すように言い返す。
「そういうお前こそ、夏未にベタ惚れしまくってるだろう?」
まぁな、とあいつはまた笑った。
10年も一緒にいた親友だけあってか、言い争いとも言えないじゃれ合いになった。
ふと円堂の薬指を見た。
「お前結婚指輪してたっけ?」
確かにいつもなら付けて来ない指輪が薬指を蛍光灯の人工的な光にキラキラと反射させている。
とはいえシンプルで宝石や模様も着いていない。
「サッカーやる時、邪魔なんだ♪」
おいおい、いいのか?結婚指輪だぞ?
俺は呆れながら、まあ円堂らしいけどなと思った。
霧野…
霧野が付けたらどうなるのだろう。
あの細い綺麗な指に飾りを付けたらさぞや綺麗な花嫁に見えるだろうな…
こっそりお金を貯めて買ってあげたい。
喜ぶのかわからないけど、彼氏達が頑張ってお給料を貯めて彼女に買ってあげる…そんな感覚だろう。
目の前にいい経験者がいるから聞くのも手かもしれない…
「なあ、その指輪見せてくれない?」
円堂は恥ずかしいから嫌だ!とわざとらしく笑っている。
ムゥ…
「見せろ~~~!」
「嫌だね~♪」
2人は何十年ぶりかの追いかけっ子をした。
そして最後に円堂をソファーにゴロンと追い詰めて、馬乗りになる。
「さぁ、見せてもらおうか?」
「えー…」
その時
霧野が部室に忘れ物を取りに来たのか、扉に現れた。
「…」
彼の目がどんどん暗くなっていった。
そして、見てはいけない物を見たかのように鞄を掴んで走って行ってしまった。
「っ…霧野!」
名前を呼んだが、時既に遅し姿が見えなくなっていた。
あの顔をしたからきっと、浮気と勘違いしたのだろう。
俺は急いで彼の家まで全力で走った。
最初のコメントを投稿しよう!