拓蘭

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霧野蘭丸 13歳… 絶賛初恋中の俺には悩みがある。 それは 幼馴染みで、親友に恋していると云う事実。 小学校の時から知り合った、親友神童拓人はきっとそんな恋心に気付く事はない。 小学生から中学生に成長した彼は少し背が伸びて、より一層男らしくなり、メンタルはまだまだ変わらないがもう大分大人だろう。 俺も声変わりをしては、いるもののこの女顔は一層増した気がする。 まぁ強いて言えば、どちらもかなりモテるくらいで… 俺は男女問わずだが、神童は女子からファンクラブが出来る程らしい。 「…りの、霧野。」 ハッと顔を上げると、噂をすれば噂した人が出て来るというジンクスは本当だろうと考えてしまう。 呆れた顔で神童は俺にどうした?と笑いかけて来た為、ときめいた気持ちを悟られないように思わずノートに顔を埋めた。 「気分でも悪いのか?」 心配気な声色にふるふると首を横に振った。 ぽふん… 頭に柔らかくて暖かいものが乗る。 ぼんやりと頭を上げると神童が俺の頭に手を置いて楽しそうに頭をなでなでしていた。 バクン! まるで心臓が飛び出す程に胸が高鳴った。 「こっ子供みたいな扱いするな!」 恥ずかしさと触れてくれた嬉しさに思わず大声が出てしまった。 「ごめんごめん。じゃあ、部長会議行ってくるから。」 神童がフワリと微笑んでブリーフィングルームから出て行った。 「…恥ずかしくて死にそう…」 俺はさっき触れてくれた髪をガシガシと乱暴に弄った。 まだ心臓がバクバクと早鐘を打つ。 誰か止めて欲しい。 どうせ叶わぬ相手だったら、振ってくれた方がいい。 トマトの様に熟れた頬を隠す為にシャワールームに入り、顔だけを冷水でジャバジャバと洗う。 なかなか火照りの治まらない顔と早鐘を打ち続ける心臓は、俺の心をいとも簡単に迷わせていく。 最近読んだミステリー小説でもこの謎は解けないだろうな… 1人で冷水を浴び続けた顔より早く心の冷静さの方が早いらしい。 俺は顔を上げ、鏡で顔を写す。 火照ったままの顔は真っ赤でどうしようもない。 この気持ちはあいつに伝えてはいけない。 俺は只々、流れ続ける蛇口の水の音を聞き続けていた。
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