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それから数日後…
「んじゃあ、霧野は神童と同室で決定ね~!」
浜野の呑気な声が耳に障る。
俺達は、今週末から三日間神童家提供の一年生のみのサッカー合宿を計画していた。
とはいえ、サッカーが目的では無いと言うのが丸分かりな浜野は釣竿を持って来る気満々なのだ。
俺は正直、貴重な休日を奪われたくないからあまり楽しみではない…
「んで…浜野は誰と?」
まぁ会話に乗らないと面倒になりそうなので読書をしながら尋ねた。
「俺は速水と倉間にする!」
「はぁー!?嫌だね浜野と同じだと」
「じゃあ錦とでいいよ?」
「ヴっ…わかったわかった、浜野達と一緒で良いから!」
倉間もあまりお気に召さないらしく、うぜーとか言いながら、スマホを弄って遊んでいる。
「同室かぁ…何だか小学校の修学旅行以来だな、霧野」
そうだな…と適当に返事を返しつつ、頭の中を整理する。
…マズイな…神童と同室…
そりゃあ小学校の頃は恋なんて感じてなかったし、寧ろ無防備に腕枕して寝てた位だった。
しかし今は恋心と俺は自覚している。
要は興奮して眠れないかもしれない。
実を言うと俺は枕が変わると眠れない症候群な訳で余計に…
「…寝られないな!」
突然そう言い出した俺を怪訝そうな顔をして神童が見つめて来た。
「霧野…大丈夫か?」
全然大丈夫な訳ないだろ!とも言えず、ハハハと笑って誤魔化した。
大丈夫。
多分お前には伝えられない。
お前が好きってことは伝えられない。
1人で勝手に納得して無理して笑った。
天井を仰ぐと目がチカチカする程太陽の光と蛍光灯の明かりが反射して眩しく光った。
一瞬滲みかけた視界を遮る為に腕を挙げて目を覆う様に隠して辛い気持ちを押し殺した。
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