拓蘭

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それから一日後… 明日には帰らないといけない。 まるでそれを忘れようとする為なのか浜野がお前ら手を挙げろお!と面白そうに笑いながら水鉄砲の銃口を向けた。 場所は大浴場。 そんじょそこらの銭湯よりも遥かに綺麗で大きいこの場所でお湯の入った水鉄砲で遊ぶ中学生…。 俺は小学生にはそんな遊びを引退していたが、みんなが大盛り上がりしたせいで強制参加させられた。 俺は二刀流の緑色の水鉄砲で、浜野はでっかいスタンガンみたいなやつ。 速水はひええと言いつつも赤の水鉄砲を一つ。 倉間は俺に緑の一つの水鉄砲を押し付けて来たため何も持っていない。 神童は黒色の少し大きめのもの。 「いくぞ…よ~い どんっ!」 浜野の合図で一斉にお湯がピューピューと飛び交う。 「うりゃ~!」 「うわわわ!浜野くんやめて下さい!倉間くんも盾にしないで~」 「いくぞお前ら!」 神童もなんだかんだはっちゃけてるし、俺は静かにお湯に浸かった。 今まで滅多に人に見せなかったあんな顔を神童はみんなに見せてる。 俺が神童の特別な存在なわけがない。 はぁ。 俯くと髪がぐっしょり濡れていたせいで、雫がぼたぼたと垂れた。 特別になりたくてもなれない。 葛藤という漢字二文字が脳裏によぎる。 「霧野、お前も参加したら?」 神童が楽しげに笑う。 この笑顔を人に振りまいていると思うと辛くて辛くて仕方ない。 俺は緩く首を振って風呂を出る。 「部屋、先戻る。」 只々掠れた声でそう言うのにやっとだった。 これ以上何か言ったらきっと泣いてしまうから…
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