91人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ。いいよ。どこで会う?」
「この前送ってくれたコンビニに8時に」
「8時な、わかったよ」
短い会話ではあったがそれで電話を切った。
一切、正宗は私の質問に答えてくれなかった…。
なんとなくではあるけれど、切ない…。
こんな気持ちになったのは昨年、彼氏と別れる時以来だと思った。
本当は私だって辛い…。そんな事も知らずに正宗はどこかで遊んでいる…。
明日こそ…、明日こそは私自身の本名を打ち明けて、正宗の本当の名前をいくらはぐらかしても教えてもらう、そう心に決めた。
――――そして翌日、私は仕事を午後6時に終わらせ、自宅に帰り彼に会う支度を始めた。
正直、正宗に会えるのは嬉しい。でも、彼はどうだろう。私はただの性のはけ口としか思われていないのかも……。そう考えると若干気分が下がる。
ついつい考え込んでしまったが用意はできた。
服装は、上はピンクに英語がプリントされたTシャツで、下は青っぽいミニスカートを履いた。
携帯を開き時刻を確認する。19:33と表示されている。
もう少し…。もう少しで正宗に会える。そう思うだけでも気分は上向きになった。
そして、8時5分前―――。
私は家を出た。近くのコンビニまでは歩いて数分で行ける。
そして、時間きっかりに到着した。彼の姿はまだ見えない。
それから15分程待ったが正宗はやってこない。どしたのだろう…。もしかして約束を忘れているのか…。
そう思い、私は再度電話をしてみた。
呼び出し音は鳴っているが繋がらない…。
なぜ……?
私は段々、苛立ってきた。約束すら守れない男なのか…。私は家に引き返そうとしたその時だった。
「レナ!」
と、叫ぶ声が遠くから聞こえる。
振りかえって周りを見渡すと、そこにはスーツ姿の正宗がいた。
走って来たからだろう、彼は息が上がっている。
「遅くなってごめん…」
「どうしてスーツ着てるの?」
「それは後から話すよ…。それよりどこかで休ませてくれ…」
「あ、うん。私の家で良ければ」
「サンキュ」
そして、私は正宗を自宅へと上げて休ませることにした。
最初のコメントを投稿しよう!