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その日、私が目を覚ました時刻は午後4時を回ったところだった。
美里の家から帰ってから今に至るまでソファで眠り続けたようだ。
人の気配がしたので辺りを見てみると母が趣味で植えている植物に水をあげていたところだった。
私が目覚めたことに気付いた母は、
「おはようさん。ようやく起きた?」
「うん」
と、欠伸をしながらそう言った。
「何か、お腹すいた」
「お昼も食べないでずっと寝てたからよ」
「今夜のご飯、何?」
「結子が久しぶりに帰ってきたことだし、昌平も食べたがっていたからお寿司とることにしたよ」
「ホント?やったー」
私は子どものように無邪気に喜んだ。
「そういえば、さっきから携帯何度も鳴っていたよ」
相手が誰かはピンときた。きっと雄二からだろう。私は旭川市にある自宅を出てから一度も彼に連絡をしていない。
寂しがっているのかなぁ、と思いながら携帯を開いて相手を確認してみるとやはりそうだった。
雄二から昼頃に三件、着信があった。それと、メールが一件。
メールの内容は、
連絡が欲しい、というようなものだった。
何かあったのかな?
そう思いながら別室へと移動した。
電話をしてみて何度も呼び出し音だけが聞こえたけれど一向につながらない。
携帯で時刻を確認すると16:23と刻まれていた。
会議でもしているのかな、それともお客さんの家かな、と考えを巡らした。
雄二は営業マンなので出られない理由はそれくらいだと思う。
私は居間に戻り携帯をバッグにしまってから、
「お兄ちゃん、いつも何時頃帰ってくるの?」
「そうね、だいたい六時前後かな。待ち遠しい?」
母は微笑を浮かべながらそう言った。
「うーん、ていうか私の事気にかけてくれていたみたいだから何だか悪いなと思ってさぁ」
「あら。それを言うならお母さんだって一緒よ?」
なぜか得意気な表情で母はこちらを見ている。
「うん…。でも、私だってこう見えても普段は結構忙しいんだからさ。確かに前より連絡しなくなったかもしれないけどね」
母は黙って聞いていたようだけれど、やがてこう言った。
「結子。あんた、彼氏でもできたの?」
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