91人が本棚に入れています
本棚に追加
彼との情事が終わった後、私は複雑な気分だった。そうは言っても悪い意味ではない。
正宗に今のところ恋愛感情は湧いていないものの、私に対するその行為は女性のような手つきで実に優しく滑らかに抱いてくれた。
相手の職業はまだ訊いてはいない。私は思った。この人、AV男優にでもなればいいのにと。
知らないはずの私の身体をまるで何度も抱いているかのように、感じる部分を探り当てていた。それと同時に私は彼との情事に本気で溺れた。
そして、正宗が下着を身にまとっている間、これっきりか…と思うと残念で仕方なかった。
私の心の中には爽快と無念の双方が存在していた。
そのようなことを思っていると、彼は私に一枚の紙をよこした。
それを見てみるといつ書いたのかはわからないが数字が羅列されていた。
「また、俺に会いたくなったらその番号に電話してくれ」
と、正宗は笑顔でそう言った。
やはり、彼は今までの男共とは違う。連絡先を教えてくれるなんて初めてのことだから。
でも、これって本当に正宗の番号なのだろうか。私はにわかに信じ難かった。
そして彼は、
「もう、帰ろうか。途中まで送るよ」
そう言って自宅近くのコンビニまで送ってもらった。
私は家に着いた後、疲れたのか一気に身体から力が抜けた。あんな良い思いをしたのに。
それから考えた。正宗は軽いけれど根は良い奴なんじゃないかと。食事を共にし、その後予想通りではあるが私を抱いた。そして私を律儀にも送ってくれた。
なので、少しは信用してもいいのではないかと思った。
これまでが昨日一日で起きた出来事。
最初のコメントを投稿しよう!