はじめにして終わり

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一度だけ、 彼女のことを触ってみた。 深い傷口の手触り、 粘度の低い透明な流血。 こんなになるまで我慢してるんだ、 この人、 と可哀想になる。 どんなに好きでも能動的行為に興奮しない私。 痛ましさに慄き、 このままじゃ駄目、 止血しなきゃ、 の一心で意を尽くす。 今までとうってかわって、 なんだかぎこちない反応。 明け方近く、 彼女は裸のまま寝てしまった。 猫科の大型動物が麻酔銃を撃たれたように、 突然。 本人はとうに眠りに落ちているのに、 その指は最後の愛撫を与えようとしてピクっと動いては私の胸を這う。 トカゲのしっぽのように。 あの髪の匂い、 首筋の匂い、 唇の匂い(私の匂いと混じっている)が急速に霧散していく。
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