はじめにして終わり

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「食事の予約が・・・」 キリがない。 8時になり、 やっと私たちはホテルを出て、 レストランに向かった。 二枚のツーショット写真がある。 一枚はレストランに行く前、 夕映えに輝く波止場で通行人に撮ってもらったもの。 もう一枚はそのレストランの薄暗い隅の席で、 店員に撮ってもらったもの。 二枚の写真のなかの私はまるで別人の顔をしている。 後者では輪郭は滲み弛緩して、 口紅は剥げ、 視線が定まっていない。 征服された、 猥褻な顔。 こんな「露骨な顔」で外出したのか、 と思うと赤面するが、 それはまだ後の話。 対して彼女の方は二枚とも引き締まった明晰な表情で、 後者の写真でも極めて常識的に笑っている。
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