わたしたちの失敗(2)

10/21
前へ
/21ページ
次へ
「その話聞いたときね、ちょっと嬉しかったの。ノノちゃんのこと助けてくれて」 「助け……? だからなんの話だよっ」  しかしこれ以上は語らず席を立つ。「じゃ、わたし行くね」  すると彼も立ち上がる。「行くねってなんだよ。上野まで一緒だろ」 「ごめん。ノノちゃん図書室で待ってるから」 「あ、そう」  割り勘で支払いを済ませ、わたしたちはお店を出た。  じゃね、と短く告げ、わたしは学校へ向かって歩きだした。すると背後で彼が声を張り上げた。 「おれはお前らに仲直りしてほしいから!」  わたしは立ち止まったものの、振り返らなかった。ぐっしょりとみっともなく濡れた顔を、愛しい人に見られたくなくて。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加