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結局、杉本くんはクラスで5人目のインフル犠牲者と認定された。
彼が学校に復帰したのは陸上競技大会の10日後、12月の第3月曜だった。週末から冬休みとあってみんなどこかウキウキしていて、とくに女子のあいだではクリスマスパーティーの計画がところどころで持ち上がっていた。もちろん『独り身』の人に限った話だが。
そして彼のところでも同様のパーティーを計画しているらしい。
「場所おれんちね。一応5時からだけどゼミ終わってヒマだったらすぐ来ていいから」
が、そのねらいは見え透いていた。「いい。家で過ごすから」
「んなさびしいこと……」
「よけいなことやめてくれる? 約束したよね。無理に仲取り持つことはしないって」
「そう意固地になんなよ」杉本くんはため息をつく。「おれも見たかったぜ、お前らの感動的なハイタッチ」
「あれはその場のノリってゆうか……」
「頼むよぉ。奥沢だって結構気にしてんだからさ」懇願するように彼は喰い下がる。「あっそうそう! おれんちついにテレビ入ったんだよ。薄型画面のやつ。とうとうデジタルだぜ~。杉本家の21世紀の幕開けを見てくれよ」
「考えさせて」
わかった、と彼は引き下がった。「待ってっかんな。おれもあいつも」
うんとは言わず、わたしはただ小さくうなずいた。
しかしながら、このところ体調がすぐれない。食欲がなく、微妙にだが寒気もする。もしかすると潜伏していたインフルが発症しかかっているのではないか……。そんな悪い予感がしていた。
翌日、わたしは学校を休み、お母さんと前橋にある総合病院に行った。診療科目は一般の内科ではなく、循環器内科である。由佳ちゃん久しぶりね、とそこに勤める古参の看護師さんは声をかけてきた。すっかり大きくなって……ないわね。
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