10人が本棚に入れています
本棚に追加
「マジで?」杉本くんが色めき立った様子で言う。「あー気にすんな。クリスマスがだめでも新年会があるだろ」
それもだめかも、とは言えなかった。それどころか最悪の場合、バレンタインに間に合うかどうかも怪しい。
代わりに言う。「エリナとのことは、もう心配しないで。ちゃんと話してみるから」
「そっか。やっぱなー、おれがあれこれ企てるよりそっちのがいいよな。女どうしの話だもんな。あーなんかおれバカみたいだ」
「そんなことないよ。ありがと」言いながら微笑みかけた。「杉本くんといろいろ話したおかげでわかったもん。やっぱ、エリナのことは嫌いになれないって。そりゃそうだよね、命救われたことだってあるし」
「命救われた?」
どこかおかしそうに彼が問う。なにかのたとえと思ったのかもしれない。
わたしは文字どおりの出来事を話した。5月のあの日、飛び込み自殺を図ったことを。失恋のショックから、突発的に。
彼は絶句した。どうやらまったく知らなかったらしい。ただ一方で納得もしたようだ。なぜなら、それはわたしが定期をなくした前日のことだったからである。
そうだったんだ……。ため息をつき、彼は言った。「おれも白状するよ」
「なに?」
「おれと奥沢がグルだったってこと。つまりその……須藤ちゃんの定期隠したの」
「それちょっと違うんじゃない? 杉本くんただ協力させられただけでしょ、エリナに」
最初のコメントを投稿しよう!