わたしたちの失敗(2)

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「もしかして……知ってた? 定期隠されてたって」  わたしはクスクスと笑った。「バレバレだよ」  あのとき、わたしは品川駅の改札を前にしてそれがないことに気づいた。杉本くんはわたしが『なにか』を学校に忘れたのだと思い、エリナもわたしが『なにか』をなくしたのだと考えた。しかし2人とも、それが定期であることには思い至らなかった(そういうフリをした)。改札前なのに。2人はきっと、『定期』という言葉を自ら発しづらい心理状態にあったのだ。  IC定期が再発行できる点は言うに及ばず。中学から電車通学をしている2人がそのことを知らないはずがなかった。 「まいったよ。ごめん」また彼はため息をつく。「須藤ちゃんがなんか『通学鬱』とかで元気ないから協力しろって奥沢に言われたわけ。まさかそんなことが……」 「こっちこそ、巻き込んじゃってごめん。瑞希さんもだけど」 「まあいいじゃん、なんだかんだでいままで楽しくやってこれたし。バイトにかまけてばっかだったのは悪かったけど」 「……。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」 「聞きたいこと?」 「うん」と相槌を挟んだ。「ジュリちゃんのこと」  一瞬、彼の顔が固まったように見えた。  彼女となにかあったの? と口から出かかった。が、『なにか』なんて問い方は白々しい。「知ってた? 彼女の気持ち」
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