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わたしとエリナの交流がなくなったことは、クラス内で表立って気にされることはなかった。普段行動をともにするグループが違ったし、時間の経過とともに人間関係の図式が変化するのはごく普通にありうることだ。最近エリちゃんとどうなの? とナカちゃんに聞かれるくらいだった。べつにフツーだよといった具合にわたしは答えたが。レズ説がささやかれるほどの蜜月状態がそもそも異常だったのだ。
まして不仲や絶交が噂されることはなかった。が、わたしたちの現状はどこか『自然を装った状態』とは認知され得たかもしれない。
杉本くんからメールがきたのは12月に入ってまもなくのことだ。『いきなりで悪いけど話したいことがある』という簡潔な文言は、「どんな話かだいたいわかるだろ」と言外に匂わせているふうにも読み取れる。また、その話を『直接』『電話』『メール』いずれの方法でしたいのか示されていないのは、まるでわたしの出方を窺っているかのようだった。
翌日、わたしは在校中に返信する。『今さらなんの話? これまでさんざんメールしたのにろくに応じてくれなかったじゃん。私、杉本君に何か悪いことしたっけ? 全然覚えがないけど私が鈍いだけ? 何かしたならオワビします』
煮えくり返った思いをまずストレートにぶつけた。
そして休み時間中に返事が来る。彼の姿は教室になかった。『ちゃんとメールに応じなかったのは悪かったと思ってる 須藤ちゃんは全然悪くない そのことも含めてちゃんと話したい』
『話ってなに? もしかして私の友達関係?』
『奥沢と何があったんだよ せめてそれは聞きたい』
『奥沢さんとは絶交しました。てか彼女に聞いたら? 私より付き合い長いんだし』
『もちろん聞いたさ でも女どうしのことだからって話してくれないんだよ ただだいぶへこんでるみたいで』
『そうだよ。所詮女どうしのつまんないいざこざだよ』
『俺は奥沢の友人であると同時に須藤ちゃんの友人でもある その立場はわかってくれるよな』
『わかってるよ。板挟みにしちゃったことは謝ります』
『とにかく直接話したい 放課後時間取れる?』
「いいよ」
教室に戻ってきた彼に、わたしはじかに伝えた。
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