遠通ガール｢だってJKですもの｣ 第10話

わたしたちの失敗(３)

「山手線、京浜東北線は品川駅での人身事故のため全線で運転を見合わせております」

　朝の上野駅構内にくり返し放送が流れる。上野到着前に情報は得ていたものの、向かう先を見失った人混みの中でわたしも途方に暮れた。お客様にはたいへんご迷惑をおかけいたします……。本当に迷惑だ。こんなクソ忙しい時間帯に飛び込んだのはどこのどいつだとなじりたい気持ちにもなる。復帰初日だというのについてない。

　そのときメールを着信した。

『銀座線で新橋まで行こうと思ったけど入場規制してて無理だわ　そっちは上野着いた？　どっかで時間つぶさね？』

『いいよ。啄木の歌碑の前でいい？　改札出たら迷いそうだし』

『相変わらず渋い趣味してんな』

『たまたま近くにいるだけだよ～』

『じゃあそっち行くわ』

　こうして５分あまり経った頃、コンコースを埋め尽くさんばかりの人混みの中から杉本くんが現れた。冬休み中、彼は二度お見舞いに来てくれたが（二度目はエリナと一緒だった）、それ以降はひと月近く会っていなかった。おかげで実際に顔を合わせると照れくささが先に立つ。心配かけてゴメンナサイ。ひとまず丁重に詫びると、返事に困ったか、彼は若干視線を逸らし、おうと小さく言った。

　それから人混みを離れ、列車の発着時以外は閑散とした地平ホームの奥へと移動した。彼が自販機で温かいコーヒーとココアを買い、わたしたちはベンチに腰を下ろした。