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家に帰ると、たいへんだったわねとお母さんが言った。けさの一件はニュースで知ったらしい。ラッシュ時の都心で発生し、かつ復旧まで時間がかかったこともありこの件は大きく報じられたのだろう。わたしはネットでその詳細を調べた。自殺したのは都立高の女子生徒だった。遺書は見つかっていないが、周囲には「学校に行きたくない」と話していたという。なお、学校側は「いじめがあったという報告は受けていない」とのこと。
その見解自体には軽い反感を覚えたが、かといって少女の自殺の原因をこれと決めつけることもできない。というのは、彼女はわたしだったかもしれないからだ。失恋したのかもしれないし、友達と不仲になったのかもしれない。じつのところ、けさ、わたしは積極的に学校に行きたかったわけではない。死にたいという気持ちさえ心の奥底に潜んでいたかもしれない。たしかなのは、前に突発的な自殺を図ったときより、いまのほうが明らかにつらいということだった。
ナカちゃんら3人が揃ってお見舞いに来てくれたのは年が明けて間もない頃だった。わたしは意を決して杉本くんとのことを打ち明けた。要は、今後付き合うことになるだろうと。当然、ショックを受けたのはジュリちゃんだ。彼女はなにも言うことなく、ただその場でぽろぽろと涙をこぼした。そのまま、ナカちゃんに肩を抱かれ帰っていった。一方、ノノちゃんはわたしのそばに残った。ジュリちゃんのリアクションにひたすら驚き、もらい泣きまでした彼女だが、それでもおめでとうと静かに口にした。
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