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こうしてわたしたちは分裂した。
決していがみ合うようになったわけではない。でもこうなるしかないのだと知った。きょうのお昼、わたしはノノちゃんと2人きりだった。今後も4人揃うことはないだろう。兆しはあった。でも防げなかった。というより、わたしたちはとっくに分裂していたのかもしれない。たぶん、4人でお昼をともにした夏休み明けのあの日から。
ナカちゃんにはきちんとメールで詫びた。こんなことになってごめんね、と。もちろん彼女はわたしを責めなかった。よかったじゃん、珠里のことなら心配しなくていいよとエールを送ってくれた。彼女はジュリちゃんの好きな人をわたしより早く知った。だからこそグループが壊れないよう手を打ったのだ。定期入れの表には、いまもその日に撮ったプリクラが貼ってある。ダチさいこーっ! と叫ぶナカちゃん、ちょっと驚いた表情のジュリちゃん、そしてどこか硬い笑顔を浮かべているノノちゃんとわたし。
杉本くんさえ好きにならなければ……。
しかしエリナは言う。「いいじゃん。あんたなんも悪いことしてないんだし。堂々とあいつと付き合いな」
強い、と思った。
彼と付き合うことは、この失敗を背負うことなのだ。
2月なかばの日曜、来たるべきイベントに備えわたしは台所を占拠する。夕食のしたくできないじゃないとお母さんはこぼしつつも、例年になく悪戦苦闘するわたしを微笑みを交えて見守る。加熱された素材からはほんのり甘い香りが漂って……。え? 焦げ臭い? いえいえ、これも愛嬌のうち。ありったけの想いを込め、自分史上最高の逸品に仕上げよう。毒味役ならわが家に3人。おじいちゃん、お父さん、それに佳太。
なんてね。お母さんのもちゃんとあるよ。おばあちゃんにお供えする分もね。
チョコづくりなら毎年のことだが、今年のはひと味違う。甘く甘く、それでいてほろ苦いやつを食わしてやろうかと。
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