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須藤さん?
かすかに聞き覚えのある声だった。彼女はこの場を引き継ぐように、須藤さんしっかりしてと呼びかけ、額に触れた。それから、おうちの人に連絡するからケータイ貸してと言われた。わたしはスカートのポケットに入れていたケータイを取り出すと、激しく震える手でなんとかリダイヤルのボタンを押し、お母さんと告げた。彼女はそれを受け取るとまもなく通話をはじめた。自分が同級生であることを告げ、わたしの現状を伝え、さらにカバンから手帳を取り出しメモを取った。わたしの心臓に基礎疾患があり、感染症に罹った可能性があることを聞いたようだ。その途中、救急車呼んでくださいと彼女は駅員に指示した。
彼女は病院まで付き添った。お母さんから聞き出した内容は救急隊員と医師にそれぞれ伝えられた。病院に着いた時点で、わたしの熱は40℃に達していた。
「柿崎さんは?」と聞いた。
「もう帰ったわよ。住まいが茨城なんだって」
「茨木……(←正しく変換できない)」
女優さんみたいな子だったわね。とてもしっかりしててあなたと同い年とは思えなかったわ。お母さんは彼女をそう評す。「友達? クラスは違うって言ってたけど」
まさかその人が河田くんのカノジョとは言えない。「まあね」とお茶を濁す。
「由佳」お母さんの口調がにわかに真剣味を帯びた。「つらいならつらいってちゃんと言いなさい」
「はぁい」
間延びした返事をしながらも、さらに涙が滲んできた。別れた直後にわたしがこんなことになったと知れば、杉本くんはひどく落胆するに違いない。
「ま、ゆっくり休むことね」お母さんはそう言った。
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