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中庭に出た。冬至を過ぎたばかりとはいえ傾きかけた陽射しは意外に強く、吐き出す息はあまり白くならない。芝生で何人かの子どもがボールを蹴っている。中に1人だけ混じっている水色のシャツを着た男性は、白衣こそ着ていないものの紐付きのネームプレートを首から下げているのでたぶん小児科かどこかの先生だろう。
その光景を横目にしながら、わたしは話した。杉本くんに好きと告げたこと、そして彼から「ずっと好きだった」と告げられたことを。
「ふうん」エリナは背後で淡々と口にする。「よかったじゃん相思相愛で」
もしや、と思った。「……知ってた? 杉本くんがわたしのこと好きだったって」
「ま、友達としての付き合いならあんたよりずっと長いしね」
「なんだもう……」
「はじめて見たよ、あいつが本気で誰か好きになるの」
後ろにいるエリナの表情は窺い知れない。ただ口調が切なげに聞こえる。
「4月に引っ越し祝いであいつんち行ったの。そんとき酔った勢いであいつ言ったんだよ。お前の隣の席のコ、なんかいいよなって」
どうやら前に聞いた『脱北祝い』のことらしい。エリナが買い置きのビールを全部あけて酔いつぶれたという……。
「正直ぴんとこなかった。あいつ中学時代はぜんぜん女子に興味なさそうな感じだったし。あたしもあんたのことよく知らなかったし、ぶっちゃけつまんなそうなコだなーくらいにしか思ってなかった。あんた自己紹介でほとんどしゃべんなかったしね」
「……」
言葉が出ない。彼はそんなに前からわたしを……?
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