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「そっか、ああゆうコがタイプなんだって思うしかなかったよ」自嘲するように彼女は言う。「あたしには見向きもしなかったのにさ……」
人が誰かを好きになる理由なんてわからないものだ。
ノノちゃんが白石先生を好きになったことだって同じだ。彼女はわたしと先生のやりとりがきっかけだったと話したが、彼女はわたしに問われたことで、ただ合理的な理由づけをしただけなのかもしれない。
相槌を打つことさえできないでいたが、ここで湧いてきた疑問を口にする。「……憎らしくなかったの? わたしのこと」
「妬いたよもちろん。でもそれより俄然興味が湧いてきた。あいつがマジボレしたってゆう『隣の席のコ』に」
そうゆうことか……。わたしはつぶやいた。が、そんな彼女の心理を完全に理解できたわけではない。むしろ訳がわからなかった。好きな人にあえて意地悪する心理ならまだわかる。が、彼女がわたしに対して取った行動はまるでその逆だったのだ。
「定期隠したのばれたついでに白状しとくよ」彼女は続けた。「一度あんた尾行したことがある。杉本と」
「尾行……? いつ」
「4月だよ。あんたの歓迎会やった何日か前」
「それって……帰りに?」
「うん」と彼女は言った。「あんたが上野で高崎ゆきの電車に乗るまでね」
「そうなんだ……。でもまさか群馬から来てるとは思わなかったでしょ?」
「相当遠くから来てるとは思ったよ。だってあんたみたいなマジメそうなコが入学早々毎日寝坊するなんてヘンじゃん」
なるほどね、とわたしはうなずいた。「まいったよ、エリナの執念には。でもさ、ずっと思ってたんだけどそんなにわたしといて楽し? そんなにおもしろいことしてる覚えないんだけど」
「なに言ってんの。どー考えたってあんたがいちばんオモシロイよ」茶化すようにそう言い、静かに付け加えた。「……マイベスト」
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