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「あら、ちゃんと来たのね」
次の日、大人しく第3校舎の屋上へと現れた僕に、彼女はそういった。
「そういう約束だろ?」
僕は、さも当然のように答えるが、彼女は少し落胆したような口調で口を開いた。
「あなたがそういう約束を守る人間だったなんて」
「僕のなにを知ってるんだ!!」
全く、理解に苦しむ。初対面だというのに。
「ところで、この屋上ってでれないんじゃなかったっけ?」
確か、鍵がかかっていて出れないと、クラスの人間強度の低い人間が最初の昼休みに騒いでいたはずだったが。
「特に問題ではないわね。このタイプならすぐ開くわ」
「開くって」
「開けれるといったほうが伝わるかしら」
彼女は、そう言ってどこからか針金を二つ取り出して、僕へ見せてきた。
「犯罪!」
「大丈夫よ、ちゃんと閉めるから」
「そういう問題!?」
「世の中のほとんどの事は、他人に見つからなければしていいことなのよ」
「ただの女子高生に語られる世の中って……」
彼女は、ふう、と一息ため息をついた後、本題を切り出してきた。
「ところで、昨日の話で今日ここにいるはずだけれど」
彼女は、僕の目をまっすぐ見てきたので僕は思わず、彼女の目から視線をそらしてしまった。
「私と、付き合ってくれないかしら?」
「どこに付き合えばいいんだ」
「貴方の耳はどこについてるのかしら。私は、私と付き合ってくれないかしら?と言ったのよ?もちろん男と女として」
なぜ。そんな疑問が頭の中を駆け巡る。それはそうだろう。僕の自論では人間強度の低い人間は総じて単体で行動するものである。
「それは……」
「あなたに魅かれているから」
しばらくの間の後、僕は口を開いた。
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