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「こんなアタシでも万能じゃなくてね、アタシは魔法を使うたび体温が下がるのよ。それで最終的には低体温症でぶっ倒れる。でも」
彼女はパイロキネシスくんに目配せする。
彼は頷き、熱風を生み出す。肌を焼くほどではない、しかし、汗が出るほどの熱量。冷静になれば、彼はこんな加減もできるらしい。
「こいつがいれば、そんな際限なんて無視できる!!!」
瞬間、幾本の氷の剣が地面から突き出て、そのうち一つが僕の腕をかすめ、血が噴き出る。
「~~~ッ!!! ぐっ……! ああああああ……!」
僕は、痛みに呻く。
「……えっ? その程度で……」
「一旦退くぞナミヒト!」
サキュバスさんが一瞬呆けた氷魔法使いの隙を突くように叫び、持ち込んでいた魔法の癇癪玉を投げ付ける。
パンパンパンパン!!! と、炸裂音と閃光が氷魔法使いとパイロキネシスを包む。
彼らがひるんでいる間に、サキュバスさんは僕を抱え飛び上がり、離れた廃墟の崩れた瓦礫の陰に逃げ込んだ。
「ナミヒト、大丈夫か!? 今治すからの……!」
サキュバスさんは、淡いピンクの光を僕の傷口に押し当てる。すると、みるみるうちに傷が塞がっていく。
しかし、
「……はあっ、はぁ、はあぁっ……!」
僕の苦し気な喘ぎはすぐには収まらなかった。どころか、気づかぬうちに涙まで零れていた。こんなに痛い、ものだとは。
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