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それから、ちょっと間を置いて
「私は、許してあげるなんて言えません。
でも、どうしてもっていうなら……好きにしてください!」
と叫んでから、一目散に走りだした。
もちろん、腕をつかんでいた典子も、引きずられるようにして走る。
エレベーターに駆け込んで、ようやく振り返った先で、歩は笑っていた。
「また、明日な!」
ゆっくりと、エレベーターの扉が閉じる。
視界から消える瞬間まで、彼の笑顔は眩しいほどに輝いて見えて、悔しいことに、紗江は思わず頬を赤らめてしまう。
典子の声が、楽しげにエレベーターの中で響いた。
「全部、終わったって言ったくせに!
また明日から、始まっちゃうのかもね……」
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