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「うん、おいしい!」
「そう?高校の食堂と、どっちがおいしい?」
「絶対こっち!毎日こんなに美味しいものが食べられるなんて、いいなあ。
私も、ここの大学を目指しちゃおうかな」
「学食で大学決めるのかよ」
「だって!そういうのって大事ですよ?」
紗江は大満足で箸を置くと、息をついた。
その正面で、歩は呆れたような、それでいて嬉しそうな目で、紗江を眺めている。
今日、紗江は歩の大学に連れてきてもらっていた。
土曜日で高校の授業も大学の講義も午前中で終わりになり、二人は待ち合わせて大学の食堂にやってきていたのである。
そこで紗江は感激の声を漏らしていたのだったが……。
「あ!歩」
と、女の声がした。
歩が振り返って、目を丸くする。
「ああ、泉。英司も一緒か」
「なんだよ、歩ってば。
いつもは、さっさと帰っちゃうくせに、こんなところにいるなんて珍しい」
と、言いながら、何のためらいもなく男は紗江の隣に腰かける。
口角の上がった、形の良い唇を尖らせて、男は紗江を見た。
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