第1章

12/12

518人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
「なにしてるの?」 気が付けば、目を丸くしている典子が目の前に立っていた。 不審に思われても仕方がない。 なにしろ、お茶をいれてくると言ったはずの紗江が、なぜかベランダから慌てて駆け込んできたのだから。 しかし紗江は、何も言い訳をすることができないほど混乱していた。 それに、結局なにもいう必要はなかったのである。 ちょうど、その時、二人の沈黙を遮るようにして、お湯が沸騰したことを告げようと、やかんが悲鳴を上げたのだ。 紗江は考える前にキッチンへと走っていったし、それを見送った典子も驚くばかりで、それ以上何も言おうとはしなかったのだった。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

518人が本棚に入れています
本棚に追加