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「なにしてるの?」
気が付けば、目を丸くしている典子が目の前に立っていた。
不審に思われても仕方がない。
なにしろ、お茶をいれてくると言ったはずの紗江が、なぜかベランダから慌てて駆け込んできたのだから。
しかし紗江は、何も言い訳をすることができないほど混乱していた。
それに、結局なにもいう必要はなかったのである。
ちょうど、その時、二人の沈黙を遮るようにして、お湯が沸騰したことを告げようと、やかんが悲鳴を上げたのだ。
紗江は考える前にキッチンへと走っていったし、それを見送った典子も驚くばかりで、それ以上何も言おうとはしなかったのだった。
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