第2章

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紗江の頬が赤らんだ。 照れているわけではない、馬鹿にされたことが悔しいだけだ、と自分に言い聞かせる。 「そんなこと、言ってほしくないです。 あなたが、ここで何をしてたって、私には関係ないし」 と、紗江が言うと、男は 「ああ、そう」 と呟いてマンションを見上げた。 「じゃあ、失礼します」 早く男から離れたくて、それだけ言って、素早く男のわきを通り過ぎようとした。 ところが、男のほうがそれを止めたのである。 「ちょっと待ってよ。せっかく、また会えたんだしさ。 もうちょっと、話していっても良いでしょ」 「え?」 「ね。俺、まだ名前も知らないんだし。 せっかく、告白してくれたのに名前も知らないんじゃ、これから先に進めないと思わない?」 「告白なんてしてないです!」 紗江の声が響く。 思いがけず大きな声を出してしまったことに、彼女自身が驚いていた。 恥じるように顔を伏せると、男が優しく肩に手をかけて言った。 「まあまあ。とりあえず、ロビーに入ろうよ。寒いしさ」
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