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言われるがまま中に入ると、置いてあるソファーに腰を掛けた。
低いテーブルを挟んで、その向かい側に男が腰かける。
小さめのソファーに紗江はすぐに収まったが、男のほうは狭そうに何度も身をよじっていた。
「あの。私のほうは、話なんてないんですけど」
先に口を開いたのは紗江だった。
それを聞いて男は深い息を吐き出すと
「冷たいなあ。一目ぼれした相手に向かって、そんなに、ひどい言い方しなくても」
「だから、そんなんじゃ……あれは友達が勝手に言っただけです」
と、紗江は言い訳したが、男は彼女の言葉を遮った。
「池宮歩(いけみや あゆむ)」
開いていた口を紗江が閉じると、彼は愉快そうに繰り返した。
「俺の名前だよ、池宮歩。あんたは?」
「本橋……紗江」
「高校生?」
「はい。高校2年生です」
「へえ。若いなあ」
歩は笑って、目を細めた。
その言い方が、なんだか年寄じみて聞こえて、思わず紗江も笑ってしまった。
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