第2章

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言われるがまま中に入ると、置いてあるソファーに腰を掛けた。 低いテーブルを挟んで、その向かい側に男が腰かける。 小さめのソファーに紗江はすぐに収まったが、男のほうは狭そうに何度も身をよじっていた。 「あの。私のほうは、話なんてないんですけど」 先に口を開いたのは紗江だった。 それを聞いて男は深い息を吐き出すと 「冷たいなあ。一目ぼれした相手に向かって、そんなに、ひどい言い方しなくても」 「だから、そんなんじゃ……あれは友達が勝手に言っただけです」 と、紗江は言い訳したが、男は彼女の言葉を遮った。 「池宮歩(いけみや あゆむ)」 開いていた口を紗江が閉じると、彼は愉快そうに繰り返した。 「俺の名前だよ、池宮歩。あんたは?」 「本橋……紗江」 「高校生?」 「はい。高校2年生です」 「へえ。若いなあ」 歩は笑って、目を細めた。 その言い方が、なんだか年寄じみて聞こえて、思わず紗江も笑ってしまった。
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