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紗江が勢い込んで言うと、典子は目を丸くして言った。
「それ、変質者じゃないよね?」
「違うでしょ。おかしな感じはしなかったし……。
どっちかっていうと、格好よかったもん」
そこは関係がない気もするのだが、紗江は至って真剣だ。
その顔を見た典子は、ちょっと首を傾げた。
「珍しいね、紗江がそんなこと言うなんて。
芸能人にだって、あんまり言わないじゃない?
男の人に興味ないんだと思ってたから……ちょっと意外」
「べつに、興味ないわけじゃないよ。
ただ、そういうのに今まで縁がなかっただけ」
紗江が澄まして言う。
すると典子はおもしろそうに笑って
「へえ。じゃあ、ここでできたんじゃない、縁が」
「できたって、どういうこと?」
「だから、その男の人だよ。好みだったんでしょ?」
顔を覗き込んでくる典子に、紗江は面食らってしまった。
「好みって……。確かに、格好いいとは思ったけど、それだけだよ。
チラッと見ただけだったし。もう会うこともないんだし」
紗江は言ったが、典子は楽しげに笑っている。
「そんなの分かんないよ。ねえ、もし、また会えたらさ、声かけてみれば?」
「私が?」
「そうだよ、決まってるじゃん」
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