第1章

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紗江が勢い込んで言うと、典子は目を丸くして言った。 「それ、変質者じゃないよね?」 「違うでしょ。おかしな感じはしなかったし……。 どっちかっていうと、格好よかったもん」 そこは関係がない気もするのだが、紗江は至って真剣だ。 その顔を見た典子は、ちょっと首を傾げた。 「珍しいね、紗江がそんなこと言うなんて。 芸能人にだって、あんまり言わないじゃない? 男の人に興味ないんだと思ってたから……ちょっと意外」 「べつに、興味ないわけじゃないよ。 ただ、そういうのに今まで縁がなかっただけ」 紗江が澄まして言う。 すると典子はおもしろそうに笑って 「へえ。じゃあ、ここでできたんじゃない、縁が」 「できたって、どういうこと?」 「だから、その男の人だよ。好みだったんでしょ?」 顔を覗き込んでくる典子に、紗江は面食らってしまった。 「好みって……。確かに、格好いいとは思ったけど、それだけだよ。 チラッと見ただけだったし。もう会うこともないんだし」 紗江は言ったが、典子は楽しげに笑っている。 「そんなの分かんないよ。ねえ、もし、また会えたらさ、声かけてみれば?」 「私が?」 「そうだよ、決まってるじゃん」
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