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それからなんの問題もなく俺の勤務は終わりに入る。
門を閉めて、風などで勝手に開かないようにかんぬきを掛ける。
「うぅぅ、門番さぁん」
うん、俺は幻覚を見たかと思ったよ。
「お前、もしかして悪魔か?」
「もしかしなくても悪魔です、くすん」
口頭で―くすんとか言う奴初めて見たよ
「どうしたんだ?」
「衛兵の数が多すぎて、捕らえられて王様の愛玩悪魔にさせられそうになってそれで……くすん」
「ああ、もういい、だいたいわかった」
だから、メイド服なのかよ。
俺はトチ狂って色仕掛けでお友達にでもなりにきたかと思ったぜ。
「スカートなんて……初めて履いて、すーすーして、くすん」
「お前はよく頑張った、使えないな」
「励ますか貶すかどちらかにしてくださいよ、くすん」
「門を開けてやるから気をつけて帰れよ
今度はもっと強くなってこい」
「ま、待って下さい!
こんな格好で帰れませんよ!」
「仕方ないだろ、負けたんだからよ」
「お願いですっ! 門番さんの服を貸して下さい!」
「やだよっ!」
「少々臭くても我慢しますので!」
「失礼だなお前、唯一の服もたたっ斬るぞ!
」
「何卒、御慈悲を!」
「悪魔が人間に慈悲を乞う所なんて初めて見たよ、俺」
とは言え、勧めたのは俺だしなぁ。
「わかった、俺が服を仕立ててやるから一晩待て」
「泊まっていいんですか!?
あと、意外ですね
腹黒いのに、服を仕立てれるなんて……」
「よし、帰れ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいなんでもしますなんでもしますご飯つくりますお風呂沸かします肩揉みます」
踵を返して立ち去ろうとすると、俺の腰に泣きついて上目遣いで懇願してくる悪魔。
「冗談だ、採寸するからさっさと家にあがれよ」
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