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その日、俺は徹夜した。
飯を食う暇を惜しんで余ってた布で悪魔の服を仕立てた。
ちなみに余った布というのは俺の服を自分で仕立てた後の余りだ。
俺が作業している中、メイド服で俺の機嫌を伺いながらキョドってた悪魔が少し可愛かった。
俺が針の刺すところを間違えて--チッと舌打ちしたとき半分泣いてたのはとてもいたたまれなかった。なんかスマン。
「ほら出来たぞ、ちょっと試着してみろ」
仕立てたのは服屋とは比べものにならない雑な上着、マント、それから俺のジーンズの布地で作ったホットパンツだ。
今は春期だからこれで別にいいだろ。
「あ、ありがとうございます
なんとお礼を言ったらいいか……」
--俺が採寸を間違うはずがない。
服は全て悪魔の体にフィットした。
「お礼といってはなんですが、朝食にフレンチトーストを作りました
お口に合えばいいんですが……」
ばか野郎、俺の朝食はトーストに目玉焼きを乗っけて牛乳で流し込むのが好きなのに一つにまとめやがった。
まぁいいや。
「じゃあ、一つ貰おうか」
俺はフレンチトーストを口に入れて噛みしめる。
うん、すげーうめー。
砂糖の加え具合が見事だ。
「おいしいよ」
「えへへ、ありがとうございます
フレンチトーストだけ作るのが得意なんですよ」
やべえ、コイツ悪魔かよ!
笑顔がマジで天使じゃん。
「じゃあ、私はもう行きますね門番さん」
朝食をたいらげて、門を開ける。
「ああ、また来いよ
いつでも大歓迎だ」
今度は沢山お友達を連れて来てね。出来るだけ早急に。
「はいっ! 次こそはあの国王の命を頂戴します!」
「そしたら……」と続ける悪魔。
「また、フレンチトーストをご馳走しますっ!」
そうして悪魔は俺から見えなくなるまで手を降り続けながら帰路についた。
悪魔のメイド服が俺の部屋に置きっぱなしなのは、俺が目に隈をつくって帰宅してから気がついた。
俺が家宅捜査を受ける前に帰って来て欲しいと切に願う。
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