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俺は門番だ。
好きでこんな仕事をやってる訳じゃない。
でも好きな仕事なんてないので黙ってます。
「つーか、東門って人が来ないな~
まぁ、その方がいいけどな」
そんな独り言を漏らしながら勤務時間の終わりが近づいたので門を閉めにかかる。
「待って待って~、門番さ~ん」
遠くから聞き覚えがある女性の声が聞こえる。
俺、職務を全うします。
俺は固く門を閉める。
「ちょっと!開けなさいよっ!」
やっぱりアイツの声だ。
俺が勇者の時に一緒に修羅場を潜り抜けた聖騎士のリッカだ。
アイツのあの装備、あの声。
あと、聖騎士に似合わない口調。
間違いない、リッカだ!
「ちょっと聞こえる!開けなさいよ!
この怠慢門番!」
無視だ~☆オレハナニモキコエマセン。
「ちょっと!はやく開けないと……許さないからね
大丈夫、開けてくれるよ……ね?」
だんだん言葉に覇気が無くなっていくリッカ(暫定)
「お願いします、魔物が来ちゃうからお願いします。
まだ死にたくないよぉ
うわあああああん助けてぇぇ」
これは流石にやりすぎた。
「すみません、風で門が閉まっちゃいまして……」
それらしい言い訳をつけて門を開ける。
そこにはリッカ(確定)がペタンと座り込んでいた。
「ううぅ、ありがとう、ホントにありがとう」
スカートの裾を払いながらお礼を述べるリッカ。
わざと閉めたことを正直に話すと俺の首が絞められそうなので伏せておこう。
「あれ? あんた自己中勇者?」
……落ち着けよ俺、せっかく勇者パーティー全員に内緒にして始めた隠者(自宅警備)生活だ。
察するに、アイツはまだ俺とは気づいてない。
騙せ!俺!
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