1章『開幕』

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「……?」 2年1組の教室の窓から外を覗きながら、顔をしかめる男生徒がいた。 夏にしては、異様に冷たい風が辺りの木々を揺らす。 「何見てるの?」 その声に男生徒は振り返る。 そこには、すらっとした可愛らしい女生徒が立っていた。 「いや……ちょっと風に当たりたいなって思ってさ」 「ははは、ここからは何も見えないもんね」 女生徒は相槌を打ちながら横に並ぶ。 2階に位置するこの教室は高いとも言えず、運動場に面しているわけでも何でもないので、特に何か見えるわけでもない。 「夏なのになんか風が冷たいような……透、寒くないの?」 「愛花もそう思う?」 2年1組の――いや、この学校の中で誰よりも頭がいいと言われている人物、それが三船透である。 「バレーしてる間は屋内だから気にならなかったけど……今日ってかなり暑かったよね」 「うん、だからちょっと気になってさ」 この風の冷たさに違和感を覚えているのは女生徒――柊愛花も同じことだった。 夏なのに、秋が始まったかのような冷たさ。 二人の間を再び冷たい風が抜けていった。
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