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「……?」
2年1組の教室の窓から外を覗きながら、顔をしかめる男生徒がいた。
夏にしては、異様に冷たい風が辺りの木々を揺らす。
「何見てるの?」
その声に男生徒は振り返る。
そこには、すらっとした可愛らしい女生徒が立っていた。
「いや……ちょっと風に当たりたいなって思ってさ」
「ははは、ここからは何も見えないもんね」
女生徒は相槌を打ちながら横に並ぶ。
2階に位置するこの教室は高いとも言えず、運動場に面しているわけでも何でもないので、特に何か見えるわけでもない。
「夏なのになんか風が冷たいような……透、寒くないの?」
「愛花もそう思う?」
2年1組の――いや、この学校の中で誰よりも頭がいいと言われている人物、それが三船透である。
「バレーしてる間は屋内だから気にならなかったけど……今日ってかなり暑かったよね」
「うん、だからちょっと気になってさ」
この風の冷たさに違和感を覚えているのは女生徒――柊愛花も同じことだった。
夏なのに、秋が始まったかのような冷たさ。
二人の間を再び冷たい風が抜けていった。
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