1章『開幕』

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帰宅のために廊下に出た二人の教室から対面の校舎。 「な、なんとか間に合った」 ふぅ、と一息つく女生徒が背中の扉にもたれかかりながら呟く。 かなりの距離を走ったのだろうか、息が切れている。 キョロキョロと辺りを見回して、もう一度息を吐く。 「うーん、連絡ないなー……」 ポケットに入れてあった携帯を手にする。 スリープモードを解除しても、連絡が入ったという表示は見れなかった。 「課題出し忘れてて、一応理科室に行くって連絡は入れておいたんだけど……」 「終わったか?」 言い終わらないうちに廊下の先から声がかかる。 驚きのあまり飛び上がった女生徒がそちらに視線を移すと、茶髪の生徒がこちらへと歩いてきているところだった。 「わわわ隼人!?」 「……? なんでそんな驚いてるんだ聖花?」 顔を真っ赤にする女生徒――戸田聖花はぶんぶんと両手を振る。 「い、いや……突然声かけられたからびっくりしちゃっただけ……大丈夫大丈夫」 「ああ、悪かった。一応呼んでだけど、聞こえてなかったみたいだからさ」 茶髪を掻きながら――瀬戸隼人は廊下の先を指差した。
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