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「えっ……全然気付かなかった」
話しかけられたのは少し離れた所だった。
それよりも向こう側の時からずっと声をかけていたらしい。
「ご、ごめん……」
「気にするな。 それより、提出は間に合ったのか?」
隼人が理科室の扉に目を向けながら問う。
「うん、なんとか。向田先生まだ理科室に居たから良かったよ」
聖花は胸をなでおろす。
提出期限ギリギリのところを滑り込みセーフといった具合だ。
「まあでも珍しいな、聖花が課題すっぽかすなんて」
「ほんとうっかりしちゃってた……まさかやってたプリント毎家に忘れちゃうなんてね……」
うー、と唸って悔しそうな顔をする。
ちょっと寝過ごしたのが悪かった、とぼそぼそっと一言加える。
「間に合ったなら良かった。 今日は、このあとどうする?」
問題は解決したとみて、隼人が問いかける。
「新しい服をそろそろ買おうかなーって思ってて……その、いいかな?」
上目遣いは破壊力があるのを知ってか知らずか、隼人よりも頭一つ分小さな聖花は隼人を見上げながらそう言う。
しばらくはそのまま聖花のことを見つめていた隼人だったが、たまらず視線を逸らして、
「ああ、問題ない」
と、素っ気なく返した。
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