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廊下を嫌な静寂が包む。
時が止まったかのように5人は動かない。
聞こえるのは微かな息遣いだけだ。
それがどのくらい続いただろうか、一人が口を開く。
「ごめんなさい……お兄ちゃん」
視線を逸らしていた真奈瀬が頭を下げながらそういう。
「本当は……あんなこと言うつもりじゃなかったの……でも、あの時はカッとしてて……本当にごめんなさい」
それを聞いた和輝がハッとした表情で真奈瀬を見る。
真奈瀬は頭を上げない。
そんな和輝の背中を琴実が叩く。
和輝がそちらへ視線を送ると、琴実は無言のまま頷く。
琴実に頷き返すともう一度真奈瀬の方を向く。
「いや、俺も悪かった……真奈瀬がそんなこと本気で言うわけないのにな。それを本気にして落ち込んで迷惑かけて……ごめん」
「ううん、そんなことない! 私が悪かったの……!」
真奈瀬が顔を上げて向き合う。
その目元は微かに潤んでいるようにも見える。
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